雪道を歩く話

私の育った鉱山の町では、冬は雪がたくさん積もりました。毎朝目が覚めると、真っ白に雪が積っている日が何日もあります。一晩で30〜40cm積もることもあります。家から学校まで、子供の足で約1時間。最初に新雪の道を通って行くのは、鉱山の坑道口がある所まで歩いて行く大人の男の人たちでした。その人たちが遺した足跡を注意深くなぞって歩きます。子供の足は、大人の足より歩幅も足の長さも短くて、1足ごとにジャンプしているようなかんじになります。その足跡を外れると、長靴の隙間に雪が入ってくる頻度が上がり、学校に着くまでに靴下が濡れてしまうこともあります。それを防ぐために、足抜きという、20〜30cmの長さで足が入るくらいの筒状にしたきれを上と下にゴムで縮めたものを、長靴とズボンの隙間がうまるように履いていましたが、新雪の中に入ると、その足抜きが雪で長靴から外れてしまい、雪が長靴の中に入ってしまうのです。当時は、子供ながらに、足跡をつけたおじさんたちの脚がもう少し短かったら嬉しいんですがね、と思ってたかもしれません。

それは、毎朝ブルドーザーが来て雪道の雪を掻いてくれるようになるまで続きました。ちょうど私が小学年の高学年位なった頃だと思います。ブルドーザーが通ってくれていると、キャタピラーの後は雪がならされていて、歩きやすかったです。でもブルドーザーの雪掻きの部分、つまり、キャタピラーキャタピラーの間はツルツルになってしまっているので、気をつけて歩かないと滑って転ぶことが多く、ヘタをすると頭を打ったりして危険でした。